歌枕直美 友の会

うたまくら草子
歌枕直美の心から語りたい
vol.50 三橋ただし

「言の葉」CDジャケット写真のヘアメイクをご担当してくださった三橋ただしさんのオフィスをお訪ねし、お話しをお伺い致しました。

■垂水のうた

歌枕直美(以下歌枕):CDジャケット写真撮影の時は、大変お世話になりました。

三橋ただし(以下三橋):こちらこそ、ありがとうございました。私は、普通は90%ファッション関係の仕事をしております。その場合、モデルさん自身の人格や個性は関係なく、センス良く、きれいに仕上げたらよいのですが、文化人や芸術家の方は難しいです。でも、はじめに打合せを2回させていただいて、コンサートも聴かせていただいて安心してお仕事させていただきました。

歌枕:私は、ファッション関係には全く縁がないので共通項があるのかどうかわからなかったのですが、今回のアルバムは、三橋さんにぜひお願いしたいと直感がありました。そして、お願いして本当に良かったと思っています。

三橋:そう言ってもらえると本望です。実は、はじめて歌枕さんのCDを聴かせていただいて、大きなショックを受けました。

歌枕:ショックですか?

三橋:はい。歌枕さんも歌っておられる万葉集の「垂水の歌」が、春が音をたてて来るような幸福感を感じてとても好きな和歌でしたが「情景しか見えてこない歌」だと思っていました。しかし、CDをお聴きすると、「情感が見えてくる歌」でした。歌枕さんが歌われることで、「情景」が「情感」に変わるというのが、衝撃でした。

歌枕:そういうふうに表現していただけるなんて、ありがたいことです。最初この曲を作るとき、メロディーが違っていたのですが、はじめのところは、ほとばしる水の勢いを出したかったので、一オクターブの跳躍のメロディーに、書き換えて貰いました。

三橋:ほんとうにすごく良くできている曲だと思います。

歌枕:先日、三橋さんが「萌え出づる春」のピアノ伴奏を弾いてくださったとき、とても音楽表現が繊細で、芸術家だな~と思いました。

三橋:そう思っていただけるのは、歌枕さんが歌われる万葉集から、いろんな感情を呼び起こさせられたからでしょうね。

■才能開花?

歌枕:三橋さんが、この職業につかれた原点になるものは何でしょうか。

三橋:とても自然に入りました。子どもの時、母が化粧をする時に、いつも私を横に座らせていました。

歌枕:どうしてなんでしょう?

三橋:私が喜ぶからでしょう。メイクしていくと、どんどん変わっていくのがおもしろかったですね。また、洋服や着物を買いに行くのも、私を連れて行き選ばせました。唐子模様や御所車、そういうのがとても好きだったです。また、洋服は洋裁屋さんで作っていましたので、私が簡単にデザイン画を描きました。とても喜んでくれるので、子どもなりに嬉しかったですね。だから自然にヘアメイクの世界に入りました。

歌枕:音楽だと、大学に行って学ぶとかありますが、ヘアメイクの世界はいかがでしょうか。

三橋:お芝居や舞台のメイク学校はありましたが、撮影のメイクはありませんでしたね。だから、独学なんです。美容学校を出て、美容室で五年働いて、独立しました。

歌枕:そしてこれだけ長く第一線でお仕事されていらして、本当に素晴らしいですね。また、三橋さんの「MAKE-UP-BOOK-花の心・花の力」を読ませていただいて、文章がお上手で、失礼ながら正直びっくりしてしまいました(笑)。

三橋:自分では、文章を書くなんてできないと思っていました。小学校三年生の時、詩を書くことが宿題にありましたが、私はその頃、ロマンティックでもないし書けないと思い、タイトルを「詩」として、その時の気持ちをそのまま書いたら、誉められました。(笑)それから、その本を書くまで文章は書いておらず、はじめは編集者が書いたものを添削すればよいと思っていましたが、実際、添削をはじめると自分で書いた方がよいと思い始めました。

歌枕:どこで才能が開花するかわかりませんね。他に御自分で「こんなことができるようになるなんて」と、思われたことはおありでしょうか。

三橋:実は、人前で話すことができませんでした。

歌枕:それは、信じられませんね(笑)。

三橋:十五年くらい前まで、自分では人前で話せないと思っていましたので、テレビなどのお仕事はすべてお断りしていましたが、見抜く人がいるんですよね。「あんたはできる!」と言われて仕事を受けましたら、「おもしろい!」とうけまして、今に至ります。

歌枕:茶論コンサートにご参加いただいた時も、三橋さんのポイントをついたお話しがとても楽しいです。

三橋:茶論では、いつも歌枕さんに、「は~い、三橋さん。オープニングトークをお願いします。」って言われて、「何しゃべりますのん?」って思いましたら、「あの話」とか「この話」とか言われて、そうしましたら、ダーっと、垂水の滝の様にお話しをしてしまって・・・(笑)歌枕さんは、聞き上手というか、しゃべらせ上手です。

■心豊かに生きる

歌枕:メイクアップアカデミーを開催されて、ご指導もされていらっしゃいますが、もう何年になられますか?

三橋:もう十四年になります。卒業した人たちが、プロとして活躍しているので嬉しいです。

歌枕:どのようなことをポイントに、ご指導されていらっしゃるのでしょうか。

三橋:失敗しても良いので、失敗したらどう解決するのかを知ることが大事だと思います。水準の高い物を見せて「いいスタンダードな目を作る」そうすれば、あとはほっておいても大丈夫です。

歌枕:音楽も一緒ですね。「聴く耳をつくる」。本物を教えるというのが、重要なことですね。

三橋:はい。そしてもう一つ。ゆっくりするんではなくて、ゆったりやりなさい。」と教えます。バタバタ動いているのが仕事と思っている。しかしじっとするのは難しいことです。

歌枕:三橋さんの動きには、かどがないですね。ゆったり見せるというのは、相手に安心感を与え、重要なことだと思います。

三橋:これは私が踊りから学んだことです。ちょっとのことで、優雅に見えます。

歌枕:三橋さんはこれからの目標はありますか?

三橋:もっともっといろんな事を知っていきたいですね。知ることができたら、もっと話したいし、伝えたいです。悲しみや憂い、嫉妬などそういうものを全部自分のものにして、豊かな人間になりたいです。そして、すずしい顔をして生きていきたいですね。

歌枕:三橋さんは、すでにそういう方だと思います。

三橋:悲しみをどうとらえるかが重要で、その時は自分の心を見つめる絶好のチャンスになると思います。また隣人との絆を深めることが出来るときだとも思います。

歌枕:深いお言葉ですね。

三橋:歌枕さんは、いつも人を気持ちよく、豊かにしてくださいます。これからもどんどん、私たちを豊かに導いてください。

歌枕:ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願い致します。

三橋 ただし (みつはし ただし)

1974年 美容師免許取得 。

1979年 美容室退職後フリーランスのヘアーメイクアップアーティストとなる。

1992年 「ただし事務所」設立 。


手がけた仕事はファッション関係の他多方面に渡り、雑誌・CF・ポスターなど幅広いメディアで活躍している。特にナチュラルメイクによる肌の質感を出すテクニックには定評があり、業界内外から支持を得ている。その理念から化粧品会社の企画・商品開発・プロデュースを手がけている。絵画、音楽、舞踊と幅広い趣味を持ち、常に視野を広げるよう努力し続けている。