歌枕直美 友の会

うたまくら草子
歌枕直美の心から語りたい
vol.43 鈴木寛治宮司

三輪山をご神体とする三輪明神大神神社。「三輪山」の曲の誕生の時より、お世話になっております鈴木寛治宮司に、お話しをお伺いしました。


■靖国神社

歌枕直美(以下歌枕):ご無沙汰いたしております。

鈴木寛治(以下鈴木):よくお越し下さいました。

歌枕:鈴木宮司は、三輪にお越しになる前は、戦没者が奉られている靖国神社(*参照)で、お務めをされていたとお聞きしましたが。

鈴木:はい。学校を出てすぐ靖国神社に入りました。その頃は、ベトナム戦争中にて東京ではよく暴動が起き、境内には毎日機動隊がいる状況です。戦争に行った人もいけない。と言い、靖国は左翼のターゲットでした。

歌枕:自分の考えでなく国のため、家族のために戦争に行き、亡くなった方々、その遺族のお気持ちを思うと、何か間違っていると思います。

鈴木:戦争と戦争で亡くなった人を同じ次元でとらえています。しかし、靖国は戦争を肯定する神社ではなく、戦没者を慰霊することを目的とした神社です。従って、靖国神社の表現方法を考えなければならないと思いました。

歌枕:実際にどのようなことを考えられたのですか?

鈴木:まずお金をかけなくて、効果の上がる方法として、パブリシティを考え、色々な行事をし、正月には縁起物をもって、各マスコミを歩きました。

歌枕:エネルギッシュなお姿が、思い浮かびます。他にどのようなことを、なされたのですか?

鈴木:例えば、桜の開花を知らせる桜前線。靖国の桜が東京の基準木であることがわかりました。そこで、境内の桜の歴史を調べ「東京に春を告げる九段の桜」として、気象庁の観測を広く一般にしらしめました。

歌枕:春を告げる良いイメージですね。他にはどのようなことを考えられたのですか?

鈴木:当時、鳩公害が問題になっていましたので、鳩の鳩舎を造ることになりました。そこで、神社では土鳩から伝書鳩の白鳩に切り替えました。白鳩は一万羽に一羽生まれる突然変異の鳩です。平和の象徴として、音楽を流し、餌付けの訓練もしました。

歌枕:鈴木宮司は、白鳩の仕掛け人ということでしょうか。

鈴木:その一人です。平和の象徴白鳩を全国に知らせたい。と思い当時のテレビドラマ「鳩子の海」の斉藤こづえさんに来てもらって八月十五日、境内から鳩を飛ばしアピールしました。

歌枕:さすがアイデアマンでいらっしゃいますね。その効果はいかがでしたか?

鈴木:若い人たちのお参りが増えてきました。

■八百万の神

歌枕:私は、音楽で綴る万葉集の活動をはじめて十二年になります。一番はじめに「三輪山」の曲ができ、大神神社へ奉納させていただきました。

鈴木:もうそんなになるのですね。あの頃は、私が三輪に来たばかりの時でした。

歌枕:その後、鈴木宮司より率川神社での万葉歌碑の除幕式、神拝詞CDにおいての歌唱などのお声掛けをいただきました。また、平成の大造営の祝賀行事でコンサートをさせて頂いたりと、様々な機会を頂戴し、ありがとうございました。

鈴木:こちらこそありがとうございました。

歌枕:今年十一月に海外公演でポーランドへ行き、和歌劇「オオナムチ」を上演します。一神教の国で、どのように感じていただけるのか、通じるのか不安であり、楽しみです。

鈴木:そうですね。一神教では、神様が人間をつくられ、人間のために自然を与えました。人間はその自然を征服し、活用することが幸せになる方法と考えました。即ち、一神教では神様は絶対であります。従って一神教は信ずる宗教と言います。これに対し、日本の神様は感ずるものと言います。山や川や野原で霊気を感じ、それを神様として大切に祀った訳です。

歌枕:山にも川にも、火にも神様がいらっしゃると感じ、自然に手を合わす風習がありますね。

鈴木:あの豊かな川は何なんだろう。あの美しい山は何なんだろう。山には山の神が、川には川の神がいると考え、その自然と共存することを考えました。

歌枕:昔の人は、そういう自然の気に神様が宿っていると感じ、神社などを建てられたのでしょうか。

鈴木:そうです。古い神社の始めは神主は一年で交代しました。神主は身を清め、神様の御世話をするのが主な仕事でしたが、その内に神主も専門職になった訳です。

■使 命

歌枕:鈴木宮司は、神職が天職でいらしたのですね。

鈴木:神様はこの国を造る為に、一人一人に使命を与えております。人々はその使命を遂行しますと、また新たな使命を受ける訳です。そして、世のため、人のために働くことを求められているのです。

歌枕:生きて行くことは、天から与えられた役割があると思います。

鈴木:世のため、人のためと言いますけれど、これが中々出来ず、つい自分のために働いてしまいますが、自分のために働く人は、皆に必要とされなくなり、存在価値がなくなります。

歌枕:自分のことしか考えていない人からは、人が去りますよね。

鈴木:歌枕さんは、大丈夫ですよ。こうして三輪を忘れずにおられる。そして皆さんを喜ばせているから、「もっと歌って、もっと歌って」となってくるのですね。

歌枕:ありがとうございます。

鈴木:神様はちゃんと見ておられます。「もうこれでいいか」と言って手をぬくと、思わぬしっぺ返しを頂きますので、常に見られていると思い慎重に行動する必要があります。

歌枕:私もそう思うようにします。今、鈴木宮司が、三輪で思い描いていらっしゃることはありますか?

鈴木:私は職員に、仕事をやる時は、この仕事は神様のためになるだろうか。参拝者のためになるだろうかと考えてほしいと言います。神様の人様のためになることが神社の存在価値であります。そのことに常に気をつかっております。歌枕さんも世のため、人のために大いに歌い続けてください。

歌枕:心して、歌い続けたいと思います。貴重なお話しをありがとうございました。


*『靖国神社』
明治二年「東京招魂社」として創建され、明治十二年に「靖国神社」と改称。国を守るために尊い生命を捧げられた御霊を慰め、その事を後世に伝えることを目的としている。


鈴木 寛治 (すずき かんじ)

大神神社宮司。

昭和19(1944)年愛知生まれ。

昭和43年、皇學館大学卒業。同年靖國神社に奉職。

熱田神宮を経て平成3年7月、大神神社権禰宜に就任。

平成4年「平成の大造営奉賛会」事務局次長。

平成9年同社総務部長

平成12年2月に禰宜、同年7月から権宮司

平成14年7月に宮司に就任。