歌枕直美 友の会

うたまくら草子
歌枕直美の心から語りたい
vol.37 白鳥正夫

歴史、文化を愛し、次世代へと繋いでいきたいと活動をされている、ジャーナリストの白鳥正夫氏に、うたまくら茶論にお越しいただきお話をお伺いしました。


■瞬時の判断力

歌枕直美(以下歌枕):お久しぶりです。長く活動を応援してくだりありがとうございます。

白鳥正夫(以下白鳥):もう八年になりますね。はじめに聴かせていただいた大阪のフェニックスホールでは、音楽はもちろんのこと最後に音楽に合わせて後ろのカーテンが上がり街の夜景が眺められ、万葉の世界から現代へとつながる演出に感動しました。

歌枕:ありがとうございます。また、二年前には、ご執筆の本(*1)に私の活動をご紹介くださり、感謝しております。白鳥さんは、新聞社時代はいかがでしたか。

白鳥:はい。紆余曲折がありましたね。日刊工業新聞社で経済記者をし、その後、朝日新聞社に入り、広島、和歌山の支局で遊軍記者を担当しました。社会全般のことを書きたいと思っていましたので、良かったです。その後、本社の整理部へ異動になりました。

歌枕:整理部とは、どのようなお仕事をされるところなのでしょうか。

白鳥:ここでは他の記者が書いたものに見出しをつけて、紙面を構成します。朝刊だと最終版の締め切りが午前1時ぐらいなのですが、急に発生した大きなできごとは記事を差し替えて入れていきます。いろんなことがありましたよ。

歌枕:緊急の出来事での対処は大変なお仕事ですね。どのようなことがありましたか?

白鳥:十三年間その仕事を担当していて、美空ひばりさんの死去、天皇陛下の崩御もありました。限られた時間で瞬時に判断して、何からやれば良いのかを考えて進めて行かないといけません。

歌枕:瞬時の判断力が必要とされるわけで、実力のいることですね。他の方の記事を整理されるお仕事をされていて、ご自身の記事を書きたいとおもわれませんでしたか。

白鳥:そりゃ思いましたよ。その後、取材デスクの仕事をしないで鳥取、金沢の支局長になりました。そこで外部の人とナマで接する機会ができ、もう一度、取材記者精神を取り戻すことができました。

歌枕:地方支局での印象的なことはありますか。

白鳥:鳥取ではあまり事件などがないのですが、地方版の紙面を作っていかないといけないんですね。何か発信できることがないかと考え、「鳥取砂丘」に関わるいろんな視点での記事を1年間連載しました。後に一冊の本になりました。

■文化は生きる力

歌枕:白鳥さんは、記者のみだけでなく、企画し実行される才能をお持ちなんですね。

白鳥:そのためか、本社企画部へ異動になりました(笑)戦後五十年を前に何かをやらないといけない時期だったので、そのチームによばれました。戦後五十年の展覧会、シンポジウムなどです。直後に朝日新聞社創刊百二十年の事業が予定され、編集部に戻らずに企画委員をやろうと志願しました。

歌枕:いろんなことがつながってこられたのですね。

白鳥:奈良のシルクロード博覧会が行われてから十年目で、シンポジウム、展覧会、カルチャー、ツアーなど、ありとあらゆることをやりました。また、この仕事で十六回海外へ行く機会があり、世界はいかに広いかを感じました。

歌枕:その旅で良かったこと、印象的なことはありましたか?

白鳥:人種が変わればいろいろな文化があることがわかり、自分は地球の一員であるということが、外へでることでわかってきました。感性を磨くのも、文化力をつけるにも旅は重要だと思いました。

歌枕:記者の頃から、文化ということを考えられていたのですか。

白鳥:それは整理部時代に、勤務時間が不規則なため、空いている時間に、美術館やコンサートに足を運んだことで、感性が磨かれました。その経験が生き、美術書も出すことができました。専門家が書く本よりわかりやすいと、図書館などで購入してくださる方が多いです。

歌枕:感性はとても重要ですね。私自身も、創作を続けていくものとして、常に感性を磨いていかないといけないと思っています。

白鳥:感性、それは何かに感動し、幸せを感じることだと思います。今は、何でもお金で求めれば良しというようなところがあり、心の豊かさとはかけ離れているのが実情です。
■共に生きる

歌枕:白鳥さんは、すべての経験を生かし、次の生き方へと繋いでいかれ、とても素晴らしいと思います。そのバイタリティーはどこからくるのでしょうか。

白鳥:人間というのは通常、今日から明日へ延長で生きています。だから時には自分の生きてきたことを見直すことが重要だと思います。そこには、いろんな人との出会いがあって、多くの喜びや感動を与えられました。私はその経験を生かしたいと思います。今の時代に何が自分にできるのか。新聞記者として不特定多数の人に伝える仕事をしてきたけれど、その時にできなかったことを、これからは行っていきたいと思っています。

歌枕:今度、ご出版される著書はどのような内容なのでしょうか。

白鳥:私の人生の集大成のような本です。還暦を過ぎて次世代へのメッセージです。私は、人は生きている限り「絆」を大切にしないといけないと思います。それが「共に生きる」ということで、「人は人によって生かされている」ということを私たちは忘れてはいけないと思いました。私生活主義がはびこり混沌の時代だからこそ伝えたいと思っています。

歌枕:私も本当にそう思います。常に、「人は人によって生かされている」ということを、肝に銘じて何事も行わないといけないと、スタッフとも話しています。

白鳥:歌枕さんは、良いブレーンがたくさんいらっしゃって幸せですね。歌枕さんの日本の精神を伝えようとする創作活動は、ニューミュージックのように、すぐに一般に受け入れていかれるようなものではない。でも一途に頑張っておられるので、私は応援していきたいと思っています。また、歌枕さんが「歴史的建築でのコンサート」を行われるように、私も文化財保存の活動は重要なことだと思っており、「トンボの眼」(*2)にかかわり実践活動を行っています。

歌枕:私も、日本の歴史・文化を歌をとおして、微力ながら語り伝えていきたいと思っています。本日は、ありがとうございました。



(*1) 白鳥正夫氏著書「夢追いびとのための不安と決断」の中で、~「万葉集」を今風に歌い伝える~という題目で歌枕が紹介されました。

(*2) 「トンボの眼」 「共生」と、貴重な文化財や文化遺産を保護・保存・修復し、次の世代に手渡していこうと理念に賛同した市民グループで、荒廃する自然、心の風景、文化全般にわたる情報を発信しています。


白鳥正夫(しらとりまさお)

ジャーナリスト、朝日新聞社前企画委員。

社団法人日本中国水墨画交流協会参与。新居浜文化協会顧問。

1944年、愛媛県新居浜市生まれ。

中央大学法学部卒業後、日刊工業新聞社編集局を経て、1970年に朝日新聞社編集局に入社。

広島・和歌山両支局で記者、大阪本社整理部員。

鳥取・金沢両支局長から本社企画部次長に転じ、1996年から2004年まで企画委員を努める。

この間、朝日新聞創刊120周年記念プロジェクト「シルクロード 三蔵法師の道」の中心的役割を担う。

著書に『夢追いびとのための不安と決断』『「大人の旅」心得帖』『「文化」は生きる「力」だ!』(いずれも三五館)『アートの舞台裏へ』『アートへの招待状』(いずれも梧桐書院)『夢をつむぐ人々』『夢しごと 三蔵法師を伝えて』『日本海の夕陽』(いずれも東方出版)などがある。編書に「ヒロシマ21世紀へのメッセージ」「西遊記のシルクロード 三蔵法師の道」(いずれも朝日新聞社)など多数。