歌枕直美 友の会

うたまくら草子
歌枕直美の心から語りたい
vol.25 阪口善雄

歌枕の地元である吹田市。歴史・文化にご理解の深い阪口善雄市長さんをお訪ねして、貴重なお話を伺いました。

■一隅を守り、千里を駆ける

歌枕直美(以下歌枕) いつも応援をありがとうございます。政治にはとんと縁がないので、一度、市長さんにお話しを伺ってみたいと思っていました。

阪口善雄(以下阪口) 私も歌枕さんと、お話をさせていただきたいと思っていたところです。

歌枕 政治家というある意味で特殊な仕事を選ばれたのは、何故なのでしょうか。

阪口 父が地方政治家をしていたということにも多少影響を受けていますが、私はいわゆる全共闘世代でして、学生のころは学園闘争の時代で、あの経験がなければ政治家にはなっていなかったと思います。大学時代は、国文学や近代史の研究を続けられたらと思っていました。

歌枕 それが何をきっかけに、変貌されたのでしょうか。

阪口 笑われるかもしれませんが、学生時代は、霞を食べながら、哲学のような理想を追求することで生きていきたいと思っていました。けれども、ただ美しいものを見つめているだけではなく、現実の中から光るものを探したいと思えるようになったので、政治の世界に進みました。「一隅を守り、千里を駆ける」が座右の銘ですが、自分の持ち場、持分で頑張って生きる、地球から見たら小さな吹田というまちで、世界を意識しながら頑張ろうと思っています。

歌枕 かっこいいですね。(笑)

阪口 インターネットの時代ですから、どこにいても世界中のことが一瞬にしてわかります。これからは地域で頑張る時代です。

■吹田文化創造交流館

歌枕 阪口市長さんは、「自然・歴史・文化のまちづくり吹田」をテーマにされていますが、活動の中で感動されたことはありますか。

阪口 「浜屋敷」(注1)や「西尾邸」(注2)の保存活用に至る経過ですね。郷土史なくして、文化はないと思っています。

歌枕 「浜屋敷」は、市長さんのお考えで手がけられたのですか。

阪口 はい。もともとは更地にして、公園にすることになっていたのですが、その所有者の方にお会いしたら、「本当の気持ちは建物を残したい。」とおっしゃられたので、「建物を保存して活用します。」と申し上げたら、市へ寄付をしてくださることになり、今の形に進んでいったのです。

歌枕 活用するということに意味がありますね。庄屋屋敷「西尾邸」も吹田市で、保存管理されることになったのですね。

阪口 西尾邸は国に物納されたのですが、重要文化財の指定をめざしながら「吹田文化創造交流館」として、この秋から市民の皆さんに公開します。お茶でも飲みながら文化を語れるサロンとしても活用できればと考えています。

歌枕 そういうビジョンは、ずいぶん前からあったのですか。

阪口 西尾邸の保存活用の話が出たときから、古きよきものを見つめ直す「古典回帰」といったことを考えていました。保存することよりも活用することが大切なんです。西尾邸へ行けばインスピレーションが与えられて、文化に関するイメージが湧いてくる、そういう場所にしたいですね。

歌枕 こういうことは、華々しいことではないけれど、確実に根付いていく大切なことだと思います。

阪口 僕は、パフォーマンスが嫌いなんです。よく市長が替わったら元の木阿弥って言われますが、そういうことではなく地域に残っていくことをやっていきたいです。

■伝統文化の見直し

歌枕 教育に関しては、どのようにお考えですか。

阪口 今年は戦後60周年、吹田市制施行65周年、万博から35周年など、節目の年で、これからのあり方を考えるときです。青少年問題が重要課題の一つですが、今の青少年には精神的なバックボーンがない。それは、伝統文化が欠落しているからではないでしょうか。戦後、否定されがちだった伝統文化や道徳など、いいことは見直し、再評価すべきだと思います。

歌枕 全く同感です。日本の良き伝統文化を新生させることに気付いた私は、幸運だったと思います。

阪口 いつも歌枕さんの歌を聴かせていただくと、時空を超えて、日本人が生き生きと素朴に生活していた時へと戻っていくような気がします。日本の原風景であり、生きる力を感じます。優しく聞こえるが力強い、単に癒される音楽ではないですね。いつも感動します。

歌枕 大変光栄です。吹田からも、発信できるように頑張ります。これからもよろしくお願いいたします。

(注1)江戸時代後期に建てられた庄屋屋敷を「吹田歴史文化まちづくりセンター」として再生し、平成15年6月に、市民の歴史と文化のまちづくりの拠点として開設。愛称「浜屋敷」

阪口 善雄 (さかぐち よしお)

吹田市長。

1971年 大阪市立大学文学部卒業。同年吹田市役所企画部勤務。

1987年大阪府議会議員に初当選。

1991年大阪府議会議員に再選。

1995年大阪府議会議員に三選。

1999年吹田市長当選。

2003年吹田市長再選。

趣味:町並みウォッチング・里山めぐり。

信条:一隅を守り、千里を駆ける。