歌枕直美 友の会

うたまくら草子
歌枕直美の心から語りたい
vol.12 島田陽子

大阪万国博覧会のテーマソング『世界の国からこんにちは』や『大阪ことばあそびうた』など数々の作品を書かれている詩人の島田陽子さんにご登場頂きました。

■「世界の国からこんにちは」

歌枕直美(以下歌枕)こんにちは。随分ご無沙汰しております。十数年前、先生から三〇代での転機のお話を聞かせていただいたことがとても印象的でした。参考にさせていただいて私も三〇代も終わりになりました(笑)。

島田陽子さん(以下敬称略)もうそんなになるんやね。私の転機は三七才で万博テーマソングの詩に入選したことやったとお話しましたよね。

歌枕:「こんにちは こんにちは 西の国から...」でしたね。

島田:老若男女すべての人にわかる言葉で、海外旅行など簡単にいけなかった時代、外国人と日本人が仲良くするのにどんな言葉があるのかと考えました。消印有効期限ぎりぎりに「こんにちは」がひらめいて、あわててポストへ投函したんですよ。

歌枕:そうだったんですか。ところで先生が詩人になられたのは、どうしてですか。

島田:子供の頃から、本が好きで、字を書くのが好きで、書き続けてきたら詩人になっていました。私の言いたいことを言うには詩しかなかったんですね。歌枕さんは、音楽を通して思いを伝える仕事やけど。
■今の時代に伝えたい

歌枕:『金子みすゞへの旅』(編集工房ノア)という本もお書きですが、金子みすゞさんを知ったのは何がきっかけだったんですか。

島田:金子みすゞの詩が好きだったということと、母と同じ年生まれの明治の女性だったことからのめりこみました。金子みすゞの生涯を通して、明治の男尊女卑の時代を、女たちがどんな思いで生きていたかを今の時代の人に伝えたいという思いをもって書いています。大学の授業にも使って、女子学生達に読んでもらっています。

歌枕:学生さんの反応はどういう感じなのですか?

島田:「社会の授業では聞いたけれども、ここまでとは知らなかった」というような反応があります。自分たちの今の時代にひきつけて、これは過去の事だけではないということを伝えたいですね。

歌枕:学生さんは幸せですね。本の著者から学べるわけですから。

島田:『大阪ことばあそびうた』やみすゞのことなど、こんな変わったことを教える人はいないんですね。七二才になっても授業をさせていただいてます。歌枕さんも私の歳になったら、きっと若い人に話を聞かせていますよ(笑)。
■なんで「大阪」やねん。

歌枕:先生は東京のお生まれですよね。どうして「大阪弁」で詩を書かれるようになったのですか?

島田:十一才から大阪に住んでるし、大阪弁好きやしね。子供のこころを、子供のことばで書くのが童謡なんですが、最初は共通語で書いていてなにか書ききれないのね。ある日、大阪弁で書き出したら、思ってたことが何でも書けて、開放されたみたい。それで、『ほんまにほんま』という大阪弁のはじめての童謡詩集ができたんです。

歌枕:『大阪ことばあそびうた』は、もう三冊だされているのですね。

島田:谷川俊太郎さんが共通語で「いるかいないか、いないかいるか」とことばあそびうたを書かれていて、私は、大阪弁でできへんかなと思って、書き出したらおもしろうて、おもしろうて。この本で大阪弁というのは、きれいな言葉やと見直してもらいたい、そんな使命感もあるしね。

歌枕:私も万葉集を通して、日本の素晴らしさ、日本語の美しさを見直してもらえるきっかけになればと歌っています。

島田:歌枕さんの声は本当に美しいし、すてきな作曲家と組んでらっしゃる。いいお仕事ですね。

歌枕:ありがとうございます。

島田:やっぱり女同士、女性が頑張ってるのを見るのはいいわね。私の「どいてんか」って詩があるんやけど、「どいてんか どいてんか 女のみこしや どいてんか」
女の子達が力を合わせて、道を切り開いていくからどいてんか...という意味で、私を含めた女達への応援歌なんですよ。これからも頑張ってください。楽しみにしています。

歌枕:私も大阪生まれの女の子でしたので、応援歌を歌ってもらうとはりきってしまいます(笑)。今日は本当にありがとうございました。

島田 陽子 (しまだ ようこ)

1929年東京生まれ。

日本現代詩人会、日本詩人クラブ、日本童謡協会、詩と音楽の会会員。

70年「世界の国からこんにちは」が大阪万国博覧会のテーマソングに入選。童謡集『ほんまにほんま』(共著・サンリード)で第11回日本童謡賞を受賞。詩集『ゆれる花』『北摂のうた』(以上ポエトリーセンター)『共犯者たち』『童謡』『森へ』『大阪ことばあそびうた』(以上編集工房ノア)『日本現代詩文庫・島田陽子詩集』(土曜美術社)『家族』(かど創房)『うち知ってんねん』(教育出版)童話集『海のポスト』(手鞠文庫)など多数。

第28回大阪市民表彰(文化功労部門)。

現在、帝塚山学院大学講師。朝日カルチャーセンター講師。