歌枕直美 友の会

うたまくら草子
歌枕直美の心から語りたい
vol.2  田口守隆

大阪体育大学学長の田口守隆先生に登場していただき、色々なお話をしていただきました。



■歌枕が夢枕に立つ

歌枕直美 10年前、大阪体育大学附属福祉専門学校設立から3年間、音楽の非常勤講師としてお世話になりました。独立する折に退職致しましたがそれから2年後、先生からお電話を頂き、校是を作曲してもらえないかと依頼されて驚きました。作曲家ではないので他の方に頼んでもらえる方が良いかとも考えましたが、自分自身見えてない力を先生が見いだして下さっているのではないかと思い作らせて頂きました。

田口守隆先生(以下敬称略) 大阪体育大学附属福祉専門学校が5周年を迎える時に、音楽をつけようと思いました。若い方にお願いしたいなあと思っていましたが、その時はまだ、歌枕さんの事は思いうかんでませんでした。そしたら、夢にでてきたんですね。歌枕さんが、夢枕に立ったんですよ!それですぐに電話をしたわけです。

歌枕 今年10月、 周年の記念式のパンフレットを拝見すると、『校歌』となっていてまた驚きました。

田口 福祉の方面で一流の先生方が、校是の精神も、音楽もよいと言ってくれましたよ。新しい時代は、昔からと同じでなく、もうひとつ現代人の目で見直して元に戻っていく。それが大事なことと思いますね。

歌枕 私も全く同感です。先生の常なる言動の視点の高さに啓発されたたくさんの先生、生徒の皆さんが、現社会において立派な仕事をされていることをよく耳にいたします。少なくとも数年教壇に立たせてもらった人間として誇りに思います。


■感性のバックグラウンド

田口 そういえば、歌枕先生の授業はとても楽しそうでしたね。グループ分けをして作品の発表会をさせていました。招待されて見学に行きましたが個性を伸ばす配慮が印象に残っています。

歌枕 自分自身のできる事を見つめながらも、人と人とが心を合わせてハーモニーを奏でる喜びを知る事ができれば、自分を失わずに生きていける。そのことがどのような現場に出ても勇気になるのではないかという考えから、授業をさせて頂いておりました。

ところで先生は、東京オリンピックの組織委員会事務局主事をされていらしたとお伺いしました。日本の歴史に残る式典にかかわることは滅多に経験できないことですね。

田口 そうなんですよ。それが、1日目行きましたら、馬術担当と申し渡されまして、参りましたね。それまで、馬術なんて全く知らないのですよ。体操しか知らない。困りましたね。だけど先輩に「田口君は、群馬出身、馬年生まれ、馬術担当、3拍子揃ってるじゃない。ぴったりだ。」と言われて、そうかと気持ちを切り替えました。(笑)

歌枕 粋な先輩のちょっとした一言で発想の転換ができるってことが、さすがです。(笑)心の持ち方で人生が変わりますね。

田口 それと何をするにしても『感性のバックグラウンド』があるかないか、とても重要なことだと思います。

歌枕 含蓄のある言葉ですね。


■いにしえの旅立ちは無限である

田口 僕は、歌枕さんが独立して、頑張り努力していることは、とても素晴しいと思っています。音楽はモダンなのに題材は万葉集。そこへ求めたということがとても大事なことと思うのです。これだけ世の中が進歩して、どうにでもなるような錯覚をもっている。そこが失敗につながる。最新を走っている時にこそ、考えないといけないのは原点を求めていくこと。万葉の心を音楽を通して見つめるのは、生き方の原点だと思います。

歌枕 言いたいことを的確に表現して頂いて恐縮です。

田口 「人類の音楽に対する歴史を背負って、私は歩いている。万葉の心はどうだったのか。そういう一喜一憂が、私を成長させる。」歌枕さんの心の中に、そういうものがあったのではないかと私は思うのです。きっと、万葉人の気持になって歌っていらっしゃるのでしょう。

「万葉に思いを馳せる私。私のいにしへの旅立ち。それは無限である。無限にあるということは、絶えることがなく永遠である。」

歌枕 先生は、会うべくして会う人との縁によって現在があるとおっしゃっておられますね。運命か宿命か…。私は今新たに作曲という未知の世界を引き出して下さった先生に感謝の気持ちでいっぱいです。今回のアルバムにおいて3曲、作品となりましたが是非聴いていただきたいです。今日は久しぶりにお目にかかれて大変光栄でした。ありがとうございました。

田口 守隆 (たぐち もりたか)

群馬県出身

昭和46年4月大阪体育大学教授(現在に至る)

平成元年4月 大阪体育大学附属福祉専門学校校長兼務(平成9年3月まで)

平成9年4月大阪体育大学学長(現在に至る)

文部大臣表彰「体育功労者」他多数受賞