歌枕直美 友の会

うたまくら草子
歌枕直美の心から語りたい
vol.1 小牧康伸

今回より始まりました「歌枕直美の心から語りたい」。第1回目は帝国ホテル大阪のシェフソムリエ、小牧康伸氏にご登場していただきました。

歌枕直美 帝国ホテル大阪オープンから一年余り、小牧さんと仕事上御一緒させて頂きました。その際、小牧さんの立ちふるまいの美しさと心配りに大変感激致しました。また、ソムリエという仕事にも興味があって、ぜひお話をお伺いしたいと思いました。何となくソムリエの仕事がわかっているような、わからないような…。一言で言うと、どう説明できるのですか?

小牧康伸氏(以下敬称略) ソムリエは、料理とお酒のお仲人さんみたいなものですね。料理とか対象とか、全てのものを見極めてトータル的に食事を有意義に終えるために、ふさわしいワインをおすすめするのがソムリエの役目です。

歌枕 以前小牧さんにお勧め頂いたワインの味の変化が忘れられません。コルクを開けて空気に触れ、時間の経過と共にワインの味が芳醇になっていく。大変印象的な体験でした。

小牧 ワインにも人格があり、ワインの口を開けると、今まで熟成してきたものが世に出て来る訳です。人間が結婚するように、さらに空気と結婚するというか触れ合うことで、ワインの味と香りが広がるんですね。その時、はじめて再生、復活するわけです。

歌枕 ワインも人間も同じですね。ワインにも人格があるという考えに、ヨーロッパ文化、生活においてワインが非常に大切なものであるという事がわかります。


■『天の川の恋』にはシャンパン?

歌枕 話は変わりますが、映画の中でもお酒はでてきますよね。そういう場面は、気になりますか?

小牧 なりますね。画面の中でワインがポンと置いてある。それには必ず意味がある。そこが面白いんですよね。

歌枕 そうですね、そういう視点が加わると、映画を見るにしてもより楽しみが増しますよね。

小牧 例えば映画『カサブランカ』ですと G・H・マムのコルドンルージュというシャンパンがでてくるんですよね。そして飲む時のセリフが …
「君の瞳に乾杯!」(笑)

歌枕 私の一番好きな映画の名セリフを、目の前で言われるとドキッとしますね。(笑)

小牧 ちなみにシャンパンを発明したドン・ペリニヨンは「天の星を溶かしたような味だ。あぁ幸せを飲んでいる。」と第一声。

歌枕 素敵な言葉ですね。

小牧 ですから『天の川の恋』を聴くときには、シャンパンがいいんじゃないかと。それもまっ暗な夜。お月さまの明るさで、シャンパンの泡を透かし見て、夜空の天の川をオーバーラップする …。

歌枕 …万葉にシャンパン?まさしく「和魂洋才」!。9月の『つくよみコンサート』の企画にぜひ取り入れます。
コンサート終了後、「幸せを飲んでいる。」とお客様に一声言っていただけたらどんなに嬉しいでしょう!幸せを感じる瞬間は、自分の心に触れるちょっとした出来事だと思います。現代社会において、こうした心に触れる何かを探せない人が多いかもしれません。


■『みやびうた』年代を超えたスケールの大きい世界

小牧 音楽もいろいろあり過ぎて、世の中非常に過激で、大切なものを見失っているじゃないですか。その中で、私は歌枕さんの曲を聴くと忘れ去ったものがよみがえってくるようです。心がじわじわぁっと伝わってきて香しい。音楽の中にも香りを感じるんですね。そこがすごいと言うか、飽きないと言うか、いつ聴いても心にしみるんですよね。『みやびうた』は、年代を超えたスケールの大きい世界だと思います。

歌枕 大変光栄なお言葉をありがとうございます。勇気づけられます。小牧さんとは仕事の分野は違っても、人間の感性に訴える仕事として全く共通していますね。小牧さんはワインのみならず日本酒もお詳しいので、また機会がありましたら、日本酒談議をさせていただきたいですね。今日はどうもありがとうございました。

小牧 康伸 (こまき やすのぶ)

昭和50年4月(株)帝国ホテル入社。レストラン部バーラウンジ課に配属。

54年1月~56年1月アメリカニューヨーク総領事公邸へ出向。バトラーとして勤務。

60年11月厚生省認定社団法人JSA第一回ソムリエ認定試験合格。

平成7年2月帝国ホテル大阪 開業準備室に配属。

平成9年1月料理飲料部レストランバーラウンジ課支配人として勤務。現在に至る。