ピアノ物語

HUPFER
フッペル


日本に数台しかないピアノ

フッペルを所有している東京の方から連絡があり、もう弾く人がいなくなったので、大変貴重なピアノなので是非次の方への橋渡しをしてほしいという内容でした。ピアノを見に行くと屋根は割れて、外装は剥げ落ちて、ペダルは効かず、音も止まらないピアノでした。しかし、このピアノからは何か魂の叫びの様なものが感じられ、絶対に次に生かさなければという使命感が生まれました。木工の大きな修理はその設備が無いとできないので、静岡県にある残り少なくなった作りの国産ピアノシュベスター社にお願いしました。社長である岩本さんは「こんなに大変なピアノは久しぶりですね。しかし、この黒を剥がすときれいな木目が出てきそうですね。」とおっしゃって下さり、木目のピアノに仕上げることにしました。












次の息吹

フッペルの修理は簡単ではありませんでした。古いがためのデーターが無いのと、今の修理部品の規格が合わないので、自作しなくてはならないことが多々ありました。しかし、ボディーから感じられる音を想像して、木の振動を感じて作業を行っていくと、最後に出てくる音は今までに聴いたことのない 魂が宿る木のぬくもりと芯の音が聴こえてきました。時間をかけて復活したフッペルは確実に次の方と出会う音を奏でていました。
完成のお披露目コンサートでもある時に前所有者のご家族を招待させていただき、出来上がったフッペルの響きを聴いていただきました。大変感激され心残りなくお別れができます、ということで修理に携わっていただいたシュベスターの岩本社長ご夫妻と一緒に写真に納まりました。その後突然のお電話で山口県のピアニスト高橋正実氏からピアノを見たいという連絡があり、その方がフッペルを弾くと、「このピアノに心奪われました。」ということで購入していただきました。現在山口県岩国市で古民家をギャラリーにしたカフェに置かれて定期的にコンサートが開かれています。