元持ち主の話によると、ご本人のお父様が当時ドイツに行ったときに現地で買ってもって帰ってきたとのこと。約85年前当時のベヒシュタインの価値は、家が三軒買えるほどでした。
　しかもトロピカルモデルというのは、当時接着にはニカワが使われていた時代に湿気の多い地方、例えば東南アジアの王族や、華僑などに向けて輸出をするために特注で作られていたいたモデルです。湿気で接着がはがれてしまわないように、外装の化粧板にはネジが打ち込んであり、フェルトやクロスなどの接着部分には、わざわざ糸で木部と縫いつけてあるという手間がかかっていました。
　85年経った今、本当に真っ黒になっていた部品という部品の汚れを落とし、あちこちに使われている真鋳はピカピカに磨き、外装は元の木目を生かしたシックなマホガニーに仕上げ、オリジナル部品は最大限残す修理を行いました。