セミナーレポート

膠(にかわ)の秘密

量産ピアノには使われず、世界一流のピアノは、なぜ今でも膠(ニカワ)を使い続けるのか。楽器だけでない視点で秘密を探ります。

■膠(にかわ)は煮皮(にかわ)

字のごとく動物、魚の皮、骨などを煮出して溶け出したタンパク質が干物になったもので、紀元前4000年の接着剤として中国、エジプトで使われていました。狩猟で捕まえた動物を使った物でした。すべてに無駄がありません。
 

■日本には墨と一緒に

仏教の伝来と同時に獣肉を食べる習慣が無かったため、日本には墨と一緒に7世紀頃伝わってきました。そうです、墨はすすを膠で固めた物なのです。その流れも受けているのでしょうか、日本画では天然画材と混ぜて使う大変身近な存在です。

■膠と楽器

1926年当時の楽器製作場面の映像を見てみると、木と木を付けている場面が出てきます。湯煎した膠を刷毛で塗って張り合わせ、圧力をかけはり合わせます。その膠からは湯気が立ちすぐ固まってしまうため素早い作業が求められています。

■今の接着剤との違いは?

一般的な木工用ホワイトボンド、アメリカ製タイトボンド、ドイツ製フィッシュグルー、そして膠の4種類を金属の板の上で乾かし2日間経った状態の物を見ていただきました。結果、素早く乾いたものは膠、そして一番硬くなっていました。曲げるとガラスみたいに割れました。完全に乾いたホワイトボンドはぐねぐねとゴムみたいに柔らかい状態です。
 

■なぜ膠を使い続けるのか

楽器と言うのは音を奏でるもので、音を振動させる材料は木が多いです。その木の材質に一番近い状態の膠を、一番振動を伝えて行かないといけない部分に使用しています。また、耐水性が悪いのを利用して湿気、水分を与えてはがし修理しやすくなっているのも見逃せません。名器と言われるヴァイオリンも膠で接着されています。

 

■ピアノの中の膠の役目

現代はいろんな種類の接着剤があり、いろんな用途で使われています。接着剤の無い世界は考えられないほどです。その中でピアノと言う楽器は、木、金属、フェルト、皮という全然違う材質の物をくっつけてできています。その用途で役目を果たす接着剤でピアノはできています。次の世代へも使い続けられるよう修理が可能なように、こだわって使っている理由がそこにあると思います。
お越しいただいた方から感想をいただきました。

利便性を求めて人はいろいろな物を発明したり、創造したりしますが、結局本当に理にかなっていて最も適している物は、昔から存在している物であることが多いのかなと思いました。膠とピアノの相性って、本当に良いんですね。直に音に対して貢献しているとは知りませんでした。(K.I)
 
ピアノの構造上、部品の一つ一つに意味があって、接着剤にも意味があって、無駄な物がないストイックな楽器だと思いました。でも猫足など見た目に楽しい装飾も施されていて、ピアノは中身も外実も素晴らしいですね。(H.I)
 
ピアノの構造や製作の過程で膠が使われていることは初めて知りました。響板を膠で張り合わせること、膠は音を遮らないなど、とっても勉強になりました。(K.I)
 
接着剤でピアノの音の響きまで変わってしまうなんて、考えたことも無かったのでびっくりしました。やっぱり人間の体になじむ物は天然素材なのかもしれませんね。(N.N)
 
絵にも膠が使われていることを初めて知りました。膠はいろんな物に使えるのですね。しかもそんなに古くからある物だとは思いませんでした。今日は参加できて良かったです。(A.M)
 
膠の特性を知るのに説明がわかりやすかったのでよく理解できました。先人の知恵はすばらしい。今後にも活かしたい可能性の大きさを覚えられて有意義な時間でした。ありがとうございました。(N.Y)
 
触った事も使った事もない、膠の事が良くわりました。ピアノの音の響きやタッチを大事にする事に、膠が使われている事に納得しました。指先も耳なんですね。(J.T)